猫のダイエット 食事の量はどう決める? 置き餌をやめて2か月で200g減った記録


「そんなに食べていないのに、なぜか太る」。

うちの猫たちが、まさにそれでした。 病院でダイエットを勧められたときは、正直なところ納得がいきませんでした。2匹合わせて1日248.5〜284kcal。あとで計算しますが、2匹に必要な量の半分ほどしかありません。

この記事は、6歳の短毛猫2匹の食事を見直した2か月の記録です。 減量対象のルチは5.9kgから5.7kgへ。維持が目標のヴィーは5.1kgから5.0kgに戻りました。

結論:食べる量ではなく「食べる時間」を区切った

やったことは、この2つだけです。

  • まず、夜中の置き餌をやめる
  • 次に、ごはんを出してから30分で片付ける(1食ずつ順番に)

減らす量を先に決めたわけではありません。時間を区切っただけで、1匹あたり109kcal±5/日に自然と落ち着きました。

大事だったのは、どちらの猫が何kcal食べたかが分かるようになったこと。置き餌のままでは、そこが永遠に分かりません。

太った経緯:迎えて11か月で、2匹とも増えていた

  迎えたとき 11か月後(6月) 病院で言われた目標
ルチ 5.6kg 5.9kg 半年で5.5kgまで
ヴィー 5.0kg 5.1kg 5.0kgで維持

増えたのは片方だけではありません。 なので「どちらかが極端に食べている」という話でもなさそうでした。

必要量を計算したら、半分しか食べていなかった

成猫の維持エネルギー要求量には、42文献・1,933頭を統合したメタアナリシスがあります。体重の区分ごとに3つの式を使い分けることを推奨している論文です(Bermingham ら, 2010, British Journal of Nutrition, doi:10.1017/S000711450999290X)。

うちの2匹は、体重の区分がまたがりました。

ルチ(5.9kg・重)= 131.8 × 体重(kg)0.366

  • 5.9 の0.366乗 = 約1.91
  • 131.8 × 1.91 = 約252kcal/日

ヴィー(5.1kg・標準)= 46.8 × 体重(kg)1.115

  • 5.1 の1.115乗 = 約6.15
  • 46.8 × 6.15 = 約288kcal/日

2匹合わせて、1日およそ540kcal。 対して、実際に食べていたのは248.5〜284kcalでした。**必要量の46〜53%**です。

なお、重いルチのほうが少なく出るのは計算ミスではありません。体脂肪は代謝的に不活発なため、体重が増えても要求量は比例して増えない、と論文が説明しています。

ただし、この式はあくまで集団の平均です。同じ「維持」でも報告値は1日122.5〜401.0kcalと3倍以上の幅があり、式の説明力(自由度調整済みR²)も0.45前後。論文自身が「個体への適用には体重推移による調整が必須」と書いています。

避妊・去勢済みだと、必要量が2割以上下がる

もうひとつ、参考になった論文があります(Mitsuhashi ら, 2011, British Journal of Nutrition, doi:10.1017/S0007114511001899)。

2歳の短毛猫22頭に、避妊手術の前と同じ量のごはんを与え続けたらどうなるかを見た実験です。結果は11週間で体重が16%増加、BCSも5.5から6.4に上がりました。 食べた量も術前と変わっていません(P=0.16)。 つまり原因は食べすぎではなく、手術によって必要量そのものが下がったことでした。

先に書いておくと、うちのケースはこれではありません。2匹とも手術は1歳になる前で、体重が増えたのは6歳のときです。当てはまるのは「避妊・去勢済みの猫は必要量がそもそも低い」という部分。手術から何年経っていても、目安に使う数字はこちらになります。

よく見る「係数1.2倍」は出てこない

ネットでよく見かけるのが「安静時エネルギー要求量 × 1.2(避妊去勢済み)」のような係数です。

この論文に、その係数は出てきません。

それどころか論文は、経験的な係数を掛けるやり方そのものに疑問を投げかけています。「避妊後は10〜30%減」といった補正は根拠が弱く、実際に体重を維持できるかは検証されていない、という指摘です。

係数が間違いだという話ではないと思います。ただ、係数で出した数字も出発点の目安でしかなく、そこから体重を見て調整するしかない。そこは変わらないのだと受け取りました。

実測から出た式:313.6 × 理想体重0.67 kJ

この論文は机上で補正するのをやめて、実測から逆算しています。太った猫を理想体格(BCS 5/9)まで戻し、その体重を4週間以上維持できた給与量を測る、という手順です。

  • 維持エネルギー要求量 = 313.6 × 理想体重(kg)0.67 kJ

NRC(2006)の推奨 419 × 体重0.67 kJ に対して、25%低い値でした。

うちの目標体重で計算してみます(1kcal = 4.184kJ で換算)。

  • ルチ(目標5.5kg):5.5 の0.67乗 = 約3.13 → 313.6 × 3.13 = 約983kJ = 約235kcal/日
  • ヴィー(5.0kg):5.0 の0.67乗 = 約2.94 → 313.6 × 2.94 = 約922kJ = 約220kcal/日

2匹合わせて、およそ455kcal/日。うちの実際は218kcalなので、これでもまだ半分弱です。

掛けるのは理想体重であって現在の体重ではありません。太っている猫の現体重に掛けると、多すぎる量が出てしまいます。

この研究の限界

  • 22頭・2歳・雌のみ・実験施設のケージ飼育。雄の去勢や家庭飼育への当てはめは検証されていない
  • 313.6という値の95%信頼区間は、およそ264〜363と幅がある
  • 維持を確認したのは最短4週間

なお論文は、太ってから減らすより手術の時点で給与量を見直すほうが猫の負担が小さいとも書いています。これから手術を受ける子には、そちらのほうが役に立つ結論だと思います。

運動量も少なかった

Catlogのデータでも、それらしい傾向が出ていました。

似たような猫の1日の平均運動時間(走った時間のみのカウント)が2分〜2分半なのに対して、うちの子たちは1分〜1分半。半分ほどです。

活動量を増やすのも選択肢のひとつではあります。ただ、飼い主はペットの活動量を過大評価しがちで、減量における運動の寄与は食事より小さい。獣医師向けのガイドラインにも、そう書かれていました(Cline ら, 2021, Journal of the American Animal Hospital Association, doi:10.5326/JAAHA-MS-7232)。

猫の肥満治療でも、食事のエネルギー制限が中心になります(German ら, 2008, Journal of Feline Medicine and Surgery, doi:10.1016/j.jfms.2008.02.004)。もともと走る時間が短いうちの子たちで運動を大きく増やすのは現実的ではなく、食事のほうから入ることにしました。

Catlogそのものの使い勝手は、Catlog(キャットログ)を1か月使ってみたをご覧ください。

反省点:置き餌だと、2匹の内訳が分からない

食べる量が標準より少なかったので、「もっと食べさせなくては」と思っていました。そこで夜中も置き餌をし、日中も出す時間だけ決めて、ドライは時間が経ってもそのままにしていました。

減った総量は分かるので、2匹合わせて248.5〜284kcalという数字は出せます。 分からないのは、その内訳です。

どちらが何kcal食べているのかは、最後まで分かりませんでした。

置き餌と多頭飼育は摂取量の把握を難しくする、と先のガイドラインでも「見落としやすい環境要因」に挙げられています。

内訳が分からないままでは、減らすにしても2匹まとめてになります。どちらにどれだけ効いているのかも追えません。

やったこと:2段階で置き餌をやめた

一気にカロリーを減らすのは避けました。急に食べる量が落ちると肝リピドーシス(脂肪肝)につながると言われているためです。

ステップ1:夜中の置き餌をやめる(1週間)

まず、夜中の置き餌だけをやめました。日中はまだ出しっぱなしのままです。

心配していたほどの反応はありませんでした。夜中に鳴いて催促した記憶はなく、「あれば食べる」くらいの感覚だったのだと思います。

ステップ2:1食ずつ、順番に30分ルールへ

翌週から日中も切り替えましたが、4回すべてを一度に変えたわけではありません。

ごはんを出してから30分経ったら、食べても食べていなくても片付ける。これを1食ずつ広げていきました。

  1. まず18時の回だけ、30分で片付ける
  2. 慣れたら23時の回
  3. 次に7時の回

12時の回だけは、いまも例外です。 日中に家を空ける日は片付けられないので、その日は出しっぱなしにしています。

移行期間は、基本的にドライフードのみで進めました。ウェットだと一度出したものを再度出すのはためらわれますが、ドライなら片付けたあと次の時間にまた出せるためです。

結果:1回で完食する量に落ち着いた

食べた量がほぼ正確に分かるようになりました。

そして残す分を片付けていくうちに、出す量のほうも1回で完食する量に落ち着きました。食べ残しが出ないので、1食ぶんがそのまま摂取量になります。

その合計が、1匹あたり109kcal±5/日でした。 2匹合わせて218kcal。もとの248.5〜284kcalから1〜2割ほど減った計算です。

現在は1日4回、7時・12時・18時・23時。フードはダイエット用の療法食には変えていません。

2か月の経過:ルチ5.7kg、ヴィー5.0kg

  開始時 2か月後 目標
ルチ 5.9kg 5.7kg 半年で5.5kg
ヴィー 5.1kg 5.0kg 5.0kgで維持

ルチの減量ペースは、2か月で3.4%減。週あたり約0.4%です。

飼い猫12頭の減量を追った臨床研究では、実際に達成された減量速度は週0.4〜1.3%(平均0.8%)でした(German ら, 2008)。うちはその下限あたり。ゆっくりですが、半年で5.5kgという目標には間に合うペースです。

論文の「減量中の目安」よりは、かなり少ない

同じ研究では、減量に必要だったエネルギーは全期間の平均で 32kcal × 目標体重(kg) でした。ルチの目標5.5kgなら約176kcal/日。実際の109kcalは、その6割ほどしかありません。維持が目標のヴィーも、先ほどの約220kcal/日に対して半分ほどです。

ただ、うちはもともと1匹あたり124〜142kcal/日を食べていました。そこから減らした幅は1〜2割です。減らしたというより、置き餌をやめたら自然とこの量になった、というほうが近いと思います。

それでもゆっくり減っている以上、この子たちの維持量は論文の平均よりずっと低いところにあるのでしょう。個体差が3倍以上ある、というのはこういうことなのだと思います。

109kcalという数字は、うちの2匹にたまたま合った量です。同じ体重でも必要量は大きく違います。減らす量は必ず病院と相談してください。

副次的な効果:ごはんの時間を楽しみにするようになった

思っていなかった変化もありました。 猫たちがごはんの時間を楽しみにしてくれるようになった(ように見える)ことです。

いつでも食べられる環境のほうが安心だろうと思っていました。でも実際は、迎えたばかりのころは出すと走ってきてクレクレ鳴いていたのに、最近はそれもなくなったなと感じていました。

時間を区切ったら、それが復活しました。 家の中の生活は刺激が少なくなりがちです。ごはんの時間を楽しみにするくらいのメリハリは、あったほうが良いのだと思います。

やってみて分かったこと

振り返って一番良くなかったのは、「平均より少ないから大丈夫」と思い込んで体重の変化を見ていなかったことです。論文の式が示すのは集団の平均像でしかなく、体重推移を見ながら調整するのが前提。うちは、その前提のほうを飛ばしていました。

  • 平均の摂取カロリーは、その子に当てはまるとは限らなかった
  • 避妊・去勢済みの猫は、一般的な目安より必要量が低い
  • 置き餌をやめるまで、どちらが何kcal食べたか分からなかった
  • 時間を区切っただけで、食べる量は自然と減った

体重は週1で測っていた(いまはCatlog Board)

太っていることに気づいたのは、病院に行く1か月ほど前。人間用の体重計に抱っこして乗り、週1回測るようにしたのがきっかけでした。

ただ、この測り方はお互いに負担でした。うちの子たちは膝に乗るのは好きなのに、抱っこは苦手です。最近Catlog Boardを導入して、意識しなくても測れるようになったのは大きいと感じています。使い勝手については、また別の記事でまとめようと思います。

首輪型のCatlogを導入したときの話(サイズ選び・セットアップ・費用)は、Catlog(キャットログ)を使い始めた正直レビューをご覧ください。